共創による物流DX構築と現場改善支援
課題
外部環境
- 「物流2024 年問題」により、モノが運べなくなる事業継続性の危機が迫っている。
- 加えて、物流関連法改正による配送会社との契約適正化や、一定規模以上の事業者 における物流統括管理者の設置義務化など、荷主責任はかつてなく拡大。
内部環境
- 伊藤忠グループにおいても例外ではなく、物流費の増加や新たな法令への対応を背景に、危機意識や企業としての責任は年々高まっている。
- しかし、各グループ会社では日々膨大な現場作業が発生し、「どのようにデータを集め」「どのようにデータを活用・分析し」「どのように現場の改善アクションに繋げるのか」といった課題が存在。
- 当該課題の解決に向けて、伊藤忠商事はデジタル技術やデータを活用して改善を支 援する仕組み=「 サプライチェーン視る・解く・回すサービス」(通称:「SC“み・と・ま”サービス」)を2024 年7 月に立ち上げ、伊藤忠グループ内への提供を開始。
- 「SC“み・と・ま”サービス」を通じてデータに基づく客観的な視点からの“説得力あ る”改善施策の提案・実行をするべく、まずは短期間で「物流現場の実態を把握した 上で、どこから手を付けるべきか」を診断し、改善に着地させていく必要があった。
サービス構成
「SC"み・と・ま"サービス」は、「視る・解く・回す」という三つのステップで、グループ会社のサプライチェーン改善を一気通貫で支援するもの。当初は伊藤忠グループ向けのサービスだったが、現在はグループ外客先にも支援を拡大。
視る
(a)物流現場の実態調査 と (b)サプライチェーン関連データの多角的な分析・解析 の二つから成り、各社の現状を短期間(1.5ヶ月程度)で迅速に可視化し、物流課題改善の重要性を強力に訴求する。
(a) 物流現場の実態調査
現場管理者含めた社内外関係者へのヒアリング、現場オペレーションの視察、物流関連データの保有状況の調査等を通じて、オペレーション課題を特定するとともに、データの取得レベルおよび物流KPIの網羅レベルを第三者目線で評価する。
(b) サプライチェーン関連データの多角的な分析・解析
各グループ会社が保有するサプライチェーン関連データを多角的に分析することで、データを起点とした実態の把握ならびに潜在的な課題を特定し、また各課題の規模感と着手すべき課題の優先順位を明らかにする。
解く
「視る」の中で明らかになった課題を解決するための個別支援を実施する。個別支援の内容は各グループ会社の課題に応じて多岐に亘る。(例:CLO向けダッシュボード導入、共同配送における定量効果の試算、データ取得方法の設計・データの取得・データの管理/運用設計、その他新規ソリューションの開発支援など)
回す
各グループ会社が自走して「視る」「解く」のサイクルを継続的に回せるよう、組織における文化の醸成・浸透や内製化の実現に向けた支援を包括的に行う。
解く
「視る」の中で明らかになった課題を解決するための個別支援を実施する。個別支援の内容は各グループ会社の課題に応じて多岐に亘る。(例:CLO向けダッシュボード導入、共同配送における定量効果の試算、データ取得方法の設計・データの取得・データの管理/運用設計、その他新規ソリューションの開発支援など)
回す
各グループ会社が自走して「視る」「解く」のサイクルを継続的に回せるよう、組織における文化の醸成・浸透や内製化の実現に向けた支援を包括的に行う。
ご依頼背景
物流実務の知見や現場視点を踏まえた倉庫や工場における改善提案に強みを持つロジクロス・コミュニケーションは、 「SC“み・と・ま”サービス」の企画・構想フェーズから現在の運用フェーズに至るまで、プロジェクトの主要パートナーとして参画している。
ご支援内容
企画・構想フェーズ
- 特に「視る」における(a)物流現場の実態調査に関する支援メニューの策定を担う。
- 具体的には、物流現場の実態をクイック且つ正確に診断する上で必要となる観点の整理とチェックリストの作成に加え、物流KPIの定義策定や、各現場でのデータ/物流KPIの管理レベルを診断するための評価軸の設計等を支援。
サービス運用フェーズ
- 「視る」における(a)物流現場の実態調査を担当。策定した支援メニューに沿って、倉庫・事務の運用ヒアリング、データ棚卸、物流システム・帳票調査、KPI現況評価等を実施。現場の実態および課題を把握した上で、採るべき改善施策までを1~1.5か月という短期間で提案する。
- 「視る」で発見された課題の改善施策の実行についても支援。(クイック改善:SOP 整備、例外運用の設計、集計業務の標準化など)
- 加えて、診断サマリーや上申用“叩き台”資料の作成や、営業同席による提案活動支援等も広く実施(現場納得から社内承認に至るまでを意識した提案ストーリー構築など)
ご支援結果
実績
- 実績:2026 年3 月時点で、「視る」×7 社、「解く」×1 社の支援を実施(いずれも1 案件あたり約1 か月のスプリント対応)
- 気付き: 「 視る」は伊藤忠グループ内に留まらず、グループ外客先からも支援ニーズがあることが判明。2025 年度は食品卸やスーパーマーケットなど食品小売り業者様からのご依頼を受け、サービスの提供範囲を伊藤忠グループ外へと拡大した上で、引き続き支援を実施。
- 波及:「 視る」を経て“着手点”を明確化→伊藤忠グループ内外で改善施策の実行へ展開しやすい導線を形成
-
定性的価値:
- 現場に通じるKPI ・用語で対話できるため、机上感が払拭され、取組推進に係る提案受容性が向上
- 「診断で終わらせない」実装の同時提示により、改善施策の実行にまで前進しやすい
- 上申資料の骨子(効果試算・ロードマップ)提供で、社内承認の速度が向上
- DX 化推進による価値の伊藤忠グループ内外への訴求
お客様インタビュー
共創で実現する、データと現場をつなぐ物流DX
~物流改善から営業支援への軌跡~
「ロジクロスさんが入ることで、『机上で計算しているだけ』じゃなく、現場の実情を理解した上での提案だと受け止めていただけるようになった」
伊藤忠商事でデジタル戦略を担当するY 様は、物流領域のDX 推進における変化をこう語ります。
データ分析には強みがあるものの、現場への浸透に課題を感じていた同社。2021
年からロジクロス・コミュニケーションと協業を開始し、当初のグループ会社の物流改善支援から、今では営業部隊による客先提案支援という新たな価値創出にまで領域が広がっています。
「データ×物流知見」の掛け合わせが、どのように現場の信頼を獲得し、ビジネス創出につながったのか。数年にわたる協業の中で見えてきた成果と、次のステージへの期待について伺いました。
- プロフィール
-
Y様 : 伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 デジタル戦略室⾧代行
入社後、エネルギー部門でLNG や重油のトレードビジネス、部門の企画統括業務を担当。2018 年よりクリーンエネルギー等の新規プロジェクト開発に従事。
チャレンジ・キャリア制度を利用し、2021 年にIT・デジタル戦略部へ異動転籍。
2022年4月よりデジタル戦略室プロジェクトマネージャー。ESG/非財務情報のデータ化PJTを担当し、グループ約600拠点の環境データ集計・算定システム導入を推進。その後、サプライチェーンの可視化・改善サービス「SCみ・と・ま」の立ち上げ~展開をPMとして主導。2026年4月より現職。
ロジクロス・コミュニケーションとの協業が始まった背景
- まず、弊社がご支援することになった経緯を教えてください。
-
Y様:
2021 年頃、社内の物流関連部署に「物流DX 構想に関して壁打ち相手になってくれるコンサルティング会社を知らないか」と相談したのがきっかけです。弊社の別プロジェクトで関わりのあった御社の吉村代表をご紹介いただきました。
私たちはデータやIT には詳しいのですが、物流の実務については専門外です。ですから、一緒に考えてくれるパートナーが必要でした。
- それまで物流のコンサルティング会社と仕事をされたご経験は?
-
Y様:
私個人としてはあまりありませんでした。ベンダー企業とのお付き合いはありましたが、物流のコンサルティング会社としっかり組むのは初めてに近い経験でしたね。
データ分析と現場感覚の融合
- 弊社と協業する以前は、どのような課題がありましたか?
-
Y様:
私たちのチームはデータの活用・分析には強みがあり、改善の規模感もデータに基づいて数字で試算・提示することはできます。ただ、それだけでは現場の方々になかなか響きにくいという課題がありました。
現場にはさまざまな制約があり、理論どおりに改善が進むわけではないからです。
- 弊社がご支援する中で、その課題はどう変化していきましたか?
-
Y様:
大きく変わりました。
ロジクロスさんが入ってくださることで、現場の方々に「この提案は、現場の実情をきちんと理解した上で持ってきてくれている」と受け止めていただけるようになったんです。現場に安心感を与え、信頼関係を築く。そこがロジクロスさんの大きな強みだと感じています。
特に物流の現場では、プライドを持って仕事をされている方が多い印象があります。そうした中で「こういう現場ではこういった改善を行った実例があります」という具体的な事例を交えてお話しいただくと、皆さん前のめりに聞いてくださるんです。
物流改善から営業支援へ──広がる価値
- プロジェクトが大きく前進したと感じられたのは、どのような場面でしたか?
-
Y様:
さまざまな場面で貢献いただいているのですが、特に印象的なのは、当初想定していた伊藤忠グループ向けの物流改善支援から、社内営業カンパニーやグループ会社を通じて、グループ外取引先への紹介・支援が増加し、営業支援という新たな領域へと広がったことです。もともとは、弊社グループ会社を対象とした物流DX 支援でしたが、協業を重ねる中で、伊藤忠グループにおける営業部隊が物流領域で新規ビジネスを獲得する際の支援にまで、広く貢献いただけるようになりました。
- 営業支援とは具体的に?
-
Y様:
現場視点を踏まえた、倉庫や工場における改善提案。それをロジクロスさんにご支援いただくことで、お客様への提案力が格段に上がり、その後のビジネス展開にもつながるようになりました。
これは今年になって明確に見えてきた、新たな価値だと感じています。単なる物流改善にとどまらず、物流の改善を通じて新たなビジネスを創出するところまで。これは何年間も取り組みを続けてきた中で得られた、大きな成果の一つですね。
知見の相互補完が生む相乗効果
- 協業したからこそ実現できたことは何でしょうか?
-
Y様:
一言で言えば、知見の相互補完ができることです。
データやIT の知見含めた商社パーソン知見と、ロジクロスさんが持つ物流実務の知が、本当にいい意味で重なっていない。だからこそ共存しやすいんです。
私たちでは気づけないような課題や懸念点を洗い出していただき、それが現場の方々にしっかりと響く。その結果、「こうした専門家をきちんと交えて提案してくれている」という評価をいただくことができ、IT・デジタル部門や営業部隊含む伊藤忠の信頼度向上にもつながり、次の支援・ビジネスへと発展していきます。
ロジクロスさんは、ご自身の価値をしっかりと理解した上で動いてくださっていると感じています。
「提案型」で変化し続ける支援スタイル
- 「伴走支援」として、特に印象に残っているエピソードはありますか?
-
Y様:
明らかにご負担が大きいはずの場面でも、現場への改善提案や示唆の提供のために、中途半端にせず、柔軟に対応してくださることが本当に多いです。
常に付加価値を提供することを意識してくださっているのを感じます。
- 具体的にはどのような点でしょうか?
-
Y様:
ロジクロスさんは、あまり現状維持をされない会社だなと感じています。
毎回お願いしている業務内容自体は大きく変わらないのですが、お客様の特性や課題を見極めながら、アウトプットを柔軟に変えてくださるんです。
「このお客様にはこういう切り口で提案したほうがいい」「前回とは状況が変わっているので、今回はこちらを前面に出していきましょう。そのために事前調査をさせてください」といった形で、進め方も含めて提案型で最適化してくださる。
そこが、私が非常に頼りにしているポイントです。
次のステージへ──「解く」フェーズへの期待
- 今後、弊社に期待されることを教えてください。
-
Y様:
課題を可視化・特定した後の「解く」フェーズですね。
本サービスはいくつかのフェーズに分かれていて、まず様々な物流関連データから課題の大きさを数値で可視化する段階があります。その後、「では、その課題をどうやって解決していくか」というフェーズに入ります。
最終的には、AI を活用した需要予測から配送の効率化や在庫最適に繋げていくことが必要となりますが、まずは、物流現場に焦点を当て、地道に改善を積み上げていくアプローチも必要と考えています。
出てきた課題の規模感や内容に応じて、「それをどう解いていくか」。私たちは「視る・解く・回す」というサービスを展開しているのですが、その「解く」のところで、ロジクロスさんに今後もっと入っていただきたいと考えています。
- 具体的にはどのような形でしょうか?
-
Y様:
このサービスが立ち上がったのが2024年7月で、初年度はどちらかというと「視る」、つまり現場の課題を可視化する取り組みが中心でした。
2年目、3年目になると、「それをどう解いていくか」という実行フェーズに入っていきます。そこでロジクロスさんの「解く」能力を積極的に活用させていただき、質の高い改善を実現していきたいと強く思っています。
- 他に期待されていることはありますか?
-
Y様:
業界や業種ごとに、どういった物流課題を抱えやすいか、というロジクロスさんの知見をもっと活用させていただきたいですね。
例えば、弊社のグループ会社のリストを見ていただいたときに、「この業界・業種の会社は、こういう課題を抱えているはずだから、まず優先的に取り組むべきです」といった示唆をいただけると、営業活動の優先順位を決める上で非常に参考になります。
私たちでは分からない業界特有の課題感を、ロジクロスさんの視点から教えていただけると助かります。
また、物流効率化法の改正や新しい法規制といった外部環境の変化についても、積極的に情報共有していただきたいですね。「こういう法改正があると、どういう企業にどんな影響が出るため、こうした支援が効果的です」といった業界知見に基づく示唆は、私たちIT・デジタル部門としては非常に価値があります。
ロジクロス・コミュニケーションが選ばれた3つの理由
1. 現場に響く物流実務の知見とコミュニケーション力
現場のリアリティに根ざした物流実務の知見を背景に、過去の改善事例も交えながら説得力のある対話を重ねることで、現場との信頼関係を構築。
2. データ・ITと物流知見を掛け合わせたサービス共創力
伊藤忠商事のIT・デジタル/データ活用の強みと、ロジクロス・コミュニケーションの物流知見を掛け合わせ、伊藤忠グループ及び顧客向けの支援・新サービスを共に設計していく「共創パートナー」としての機能。
3. 社会性の高いテーマを事業として形にする推進力
サプライチェーンの高度化や環境負荷低減といった社会性の高いテーマを「理想論」に留めず、顧客への提供価値とビジネスモデルに落とし込み、プロジェクトを前進させる推進力。